今日は夏日になるでしょうとラジオで言っていた。朝からよく晴れている。モレ
谷林道に乗り入れた車は、ゲートを通過したものの沢で崩壊した手前でストップ、
長い林道歩きが始まる。 林道は山腹を巻いて高度を上げていく。林道下部にはウ
ラジロカシやシロダモも生えていたが、高度が上がるにつれすぐに夏緑樹が主役と
なる。コナラやホウが葉を展開し始めたばかりの中、イヌブナだけが緑々とした葉
を広げきっている。
シロモジは未だ花をつけている。春から夏への途中といったところである。 小津
権現山から花房山へと続く稜線が見えてくると、林道歩きは終わりとなる。林道は
まだ上へと続くのだが、登山口の目印となる案内の標された小さな杭が立っている。
この尾根の取付きはまだ幼いヒノキの植林地帯であるためにズルズルと滑るが、す
ぐによく踏み込まれた尾根上の道となる。足元にはスミレ、イカリソウ、イワカガ
ミの花が咲いており、上を見上げると、コナラの枝がバリバリと折られ先年秋のク
マの円座が生々しい。
30分強の汗で、林道から見えていた稜線に出る。左へ行けば小津権現山、右に
行けば花房山である。左はササと低木で覆われた尾根であり、右はよく刈り払われ
た尾根である。目的地が花房山で良かった。しかも、この道は今がカタクリの花の
盛りである。ここまで来ると今まで歩いてきた林道とは植物の季節が異なり、春が
始まったばかりである。イヌブナに取って代わって存在するブナは、まだ冬芽のま
まであり、タムシバも花をつけている。
緩いような緩くないような稜線を登っていくと、花房山を真上に仰ぐ鞍部に出る。
あと5分の標識がある。予告通りに5分登りきると頂上であった。頂上には反対の
尾根から登って来た先客がいた。雪を被った能後白山が見える。
さて昼飯を食べようかとしているとギフチョウが頂にやってきた。確かにスミレ
やカタクリの花があったが、こんな所にまでいるのだねぇと思う。私の家の庭には
3月にいたから、やはり1000mを越えると夏日といえども春は始まったばかりであ
る。でも、今日はやはり暑いくらいに暖かい。
昼飯を食べたあとはタラの芽を摘みながら、2、3度休憩をとりつつダーッと降
りていった。振り返って山を見上げると、スケスケの枝が茶色に目立つ頂、山腹に
広がるボヤッとしたコナラなどの薄緑、その中のイヌブナの緑々とした塊が印象の
山の景色である。一日で季節の移り変わりが楽しめるのはこの時期、この山の醍醐
味であると感じている。 [鈴木寛人 記]
[参加者]総会及び山行Aコース参加 7名
山行Aコースの参加 1名
[タイム]松本屋8:00=モレ谷林道車止め8:20−林道より取付き点9:40−権現・
花房間の稜線10:16−1096m点10:52−花房山11:40〜12:30−稜線分岐
13:30−林道出合い14:13−車止め15:25(解散)
[地 図] 1/20万;岐阜 1/5万;谷汲 1/2.5万;樽見
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